シテ 金春 安明 (撮影:辻井 清一郎)
駿河国三保の浦。漁師の白竜(ワキ)が松に掛かる美しい衣を見つけ、持ち帰ろうとします。
すると天人(シテ)が現れ、羽衣を返してほしいと願います。嘆く天人に同情した白竜は、衣を返すので代わりに天人に舞を舞うように求めます。天人は舞のためにまずは衣を返すように頼みますが、白竜は衣を先に返すと天人が舞わずに天に帰るのではと言い、返すのをためらいます。疑う行為は人間がするもので、天に偽りはないと天人が答えると、恥じ入った白竜は衣を返すのでした。
羽衣をまとった天人は、春の美しい浦の風景を謡い舞うと、宝を地上に降らし与え、空高く舞い上がります。やがて、その姿は幽かになり、霞にまぎれて見えなくなりました。
能解説:中司由起子
(法政大学能楽研究所兼任所員)
シテ:金春 安明(シテ方 金春流80世) |