当館の代表的な収蔵品である《朝(あさ)涼(すず)》。娘と過ごす何気ない日常から想を得て、夏の朝の緑鮮やか風景の中を歩く少女を写実的に表した作品です。清方は、白い残月や生い茂る草花、葉の上で朝焼けに光る露など自然が映し出す美を見つめ、あどけない娘の横姿を幾度も画帳に写し取りました。自然と女性の美が見事に調和し清浄な雰囲気に満たされた本作は、珠玉の美人画と言えるでしょう。
現実の風景と実在の人物を写実的に構成した《朝涼》の表現法は、大正の半ばから約五年かけた模索の末に見出した清方の新たな試みでした。《朝涼》により進むべき道を見出した清方は、後に代表作となる《築地明石町》の制作へとつなげていきました。
本展覧会では、《朝涼》に至るまでの道のりを、大正期の作品を中心にご紹介いたします。