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鎌倉在住の横村出さん、初の時代小説「放下」を出版

戦国大名「毛利氏」の秘められた前史を描く

鎌倉時代の中期の越後「柏崎」と「鎌倉」を舞台にした時代小説『放下』(税込1,540円)が9月、新潟日報事業社から出版されました。作者は鎌倉市内在住の横村出さん(=写真)。

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横村さんは1962年新潟県柏崎市生まれ。元朝日新聞社の記者で、海外特派員を務めた経歴。以前にノンフィクション作品『チェチェンの呪縛』(岩波書店)を出版していますが、小説は初。故郷の柏崎を舞台にしながら、居住地の鎌倉を結びつける。構想のきっかけは鎌倉を代表する花「紫陽花」だったといいます。横村さんに出版までの経緯、鎌倉に対する想いなどを伺いました。

 

執筆のきっかけは何ですか?

「鎌倉の家の庭に植えた紫陽花が「サハシノショウ」という品種と知って、新潟県柏崎市にある母方の里が、鎌倉時代に佐橋ノ荘と呼ばれた史実を思い起こしました。まもなく、妻と散策している際に、毛利季光とその父大江広元のやぐら近くで「越後佐橋荘」と刻んだ碑文を見たのです。佐橋ノ荘は、毛利氏の所領でした。何かに打たれるような縁を感じました。これは私が書くよりほかないだろう…と。鎌倉の風土が持つ力に背中を押されるような感覚です。小説の中でも、この紫陽花が舞台回しとなって物語を彩っています」

 

苦労した点はどのようなところですか?

「毛利氏が佐橋ノ荘を本拠とした時期の史料探しですね。祖父が語っていたおぼろげな記憶をたどり、菩提寺に眠る古文書や郷土史を調べましたが、毛利氏が越後から西国の安芸へ移った経緯が判然としません。とりわけ、毛利の祖である季光から3代目の基親と、息子の時元に謎が多いのです。この嫡流の親子を主人公にして、あくまで架空の物語で歴史の空白を埋めようと思い立ちました。どんな筋書きにするか悩んで、閃いたのが世阿弥の能『柏崎』です。鎌倉時代の越後柏崎の豪族が幕府の問注所へ訴え出るのですが、さまざまな不幸に見舞われるという謡曲です。これを底本と決め、想像が膨らみました」

 

来年は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が放送されます。

「三谷幸喜さんの脚本に大いに興味がありますし、期待しています。13人のうち大江広元は、平安末期の閉塞した社会を変えた実務家でもありました。私の小説では、広元らが整えた訴訟によって「剣を交えない鎌倉武士」を描いています。「戦乱に明け暮れた鎌倉」という印象を、ぜひ打破してほしいですね」

 

鎌倉へ観光で訪れるならおすすめの場所はありますか?

「材木座海岸の豆腐川という小川まで、よく散歩します。河口に座って海を眺めると不思議とアイディアが浮かびます。ここで思いついた一文がいくつも小説の中に登場します。鎌倉の楽しみは、時を越えた風土が紡ぐ「物語」です。浜辺でも谷戸の小径でも、耳を澄ませば何かを物語ってくれるのでは…」

 

最後にメッセージをお願いします。

「鎌倉に暮らしてみて、ここでなければ書けなかった小説です。私が描いた物語の世界を多くの方と共有できたら嬉しいですね」

 

物語は、戦国大名の毛利氏の秘められた前史を描いたもの。鎌倉時代中期、越後佐橋ノ荘を本拠とした毛利基親に鎌倉から報せが届く。それは父毛利経光の遺言だった-。毛利氏のほかに、執権北条時頼、時宗、日蓮など、鎌倉ゆかりの人物も登場します。鎌倉で生まれた「時を越えた風土が紡ぐ「物語」」、是非ご一読を。書籍は、市内の島森書店<外部リンク>などのほか、ネット<外部リンク>で取り扱っています。